未だに思い出すあの記憶……。 熱海で我々FMMの一同はある惨劇に遭遇した。 奇妙な風習、 地下の遺跡、 そこに入り込んでしまった我々を襲う恐怖。 その惨劇は私、壬鉄に2年前の出来事を思い出させた。あの二度と思い出したくないあの記憶を。 しかし、私は思い出さなくてはいけない。そうしなければ我々に待っているのは悲劇だけなのだから。 〜〜続・FMMコーポレーション特別企画〜〜 2005年、某月―― 私は某半島にあるN山に出かけた。その時の私は仕事によるストレスから精神的に不安定な状態にあった。 とにかく一人になりたかった、どこか遠くに行きたかった。ただそれだけであった。 始発の電車に乗り、数時間後、N山の最寄の駅についた。N山に登るにはロープウェイがあったが、その時は徒歩で登山するつもりであった。 その判断が全ての恐怖の始まりだと気づかずに……。 まずは、そのN山登山道を探すことから始めた。しばらく歩くと細い道があり、その分岐点に案内の地図兼パンフが置いてあった。 その地図に従い登っていったのだが、不思議なことに誰ともすれ違わない。そして登っているのも私一人きりであった。 普通ならここで何かがおかしいと感じるのであろうが、その時は誰とも話したくなかったので逆にありがたく感じた。 架線の下を通り、しばらく行くと全く整備されていない山道に行き着いた。 「……ここの道でいいのか」 地図を確かめてもその道で正しいようなのでそのまま先に進んだ。 道が行き止まりになった。分岐点にみえるが右も左も木と草で通せんぼだ。しばらく付近を調べていると、 ガサッ、ガサガサ! 風も吹いていないはずなのに木の葉がゆれた。 そして奇妙な生臭い匂い。 「……何かいるのか……?」 そう思い左の茂みを調べると奥に続く道が隠されていた。そう、だれかが意識的に隠したものであった。普通ならそんな道など入り込まないのだが、その時は自分の意識がぼんやりとしていて、何かに導かれるように進んでいった。 次に私の意識が復活したのは切り立つ断崖の下であった。そこは自然の断崖ではなくもともと石切り場らしく、まるで廃墟のビルを連想させるような場所であった。 チャポン。 水音がしたのでそこに視線を向けると、大きな四角い穴が開いており、その奥に池が見えた。その池がさざなみを立てる。 さっき感じた生臭い匂いがする。 そこから信じられないものが這い出してきた。 「――切り身?」 色といい、形といい、それはまさに魚屋にあるブリの切り身そのものだった。しかしサイズが違う。人の大きさもある切り身とは! ぐちゃっ、びちゃっと音を立てながらそれは這いよってくる。 「ひいっ?!」 悲鳴をあげた。そして私は逃げた。 ――気が付くと開けた場所にたどりついた。そこは廃墟であった。もともと村があったのだろうがいまでは全て朽ち果て、なにかのポンプの部品だろうか? 雑草に埋もれていた。 あれはすでに追いかけてきていないようだ。安堵して草むらに座り込む。あれはなんだったんだと考えてみたが、もちろんなにも分からない。 ・・・み・、のこ・・・み 遠くから人の声が聞こえた。人がいることに喜んだ私はすぐにそちらに走っていった。しかし、それは間違いだった。 のこの・・みみっ!・・・のみみっ!・・・のこのみみ!!! その声はこの広場に続く森からの道からしたが、森の中からでてきたのは……人ではなかった。いや、ほとんど人だった。 しかし、頭から鬼の角のように鋸を生やした人間がこの世にいるのか!? まるでうさみみのように!!! ――その後、私は自分がN山を登ってきた反対側にある寺で意識を取り戻した。その寺の和尚がどうやら助けてくれたらしい。 もちろん、私が体験したことを全てそこの和尚にぶちまけた。 しかし、その和尚は、「忘れなさい、そして二度とここには来ないように」それだけを言った。 きちんとした介抱をうけて、私は家へと帰った。 その後、私は仕事の部署が変わり、恋人もできた。そしてFMMの面子で熱海に行った。そこでまた恐怖にであった。 熱海から帰った後、私の耳には声が聞こえるようになった。 …… てつのみみ! てつのみみ! …… 私は考えた。何某の耳というこの言葉、異常な行動、ブリの切り身。このすべては1つの線でつながるのではないか。 この謎がわかれば、私も人間でいられるかもしれない。 私はこれから私を介抱してくれたN山の和尚のところにいくつもりだ。 そこに全ての謎の答えがあるかもしれない。そう思って。 to be continued....? この話はフィクションであり、実在の人物、団体、事件などにはいっさい関係ありません。 ちなみにこの世のありとあらゆる事象とも関係ありませぬ。 写真に使った山は実際に登ったものですがかなりいいところでした。しかし、登山道の整備はして欲しい……。 途中で道に迷いかけたぞ……。 |